10/31(土)『GONINサーガ』に出演されている柄本佑さんを迎えて、第三弾のトークイベントを実施致しました。
「結構突っ込んだ質問がくると聞いているので今日は緊張しています。みなさんお手柔らかに(笑)」という挨拶とともに登壇した柄本さんは、『フィギュアなあなた』に続き2度目の石井監督作品への出演。
いままでに登壇したキャストと同じく、『GONIN サーガ』への出演は誇りだと胸を張る柄本さんは、完成した作品のエンドクレジットで柄本さんが映るシーンの上に「柄本佑」の名前が表示されるのを観て胸が熱くなったと述懐。監督に「敢えて合わせてくださったんですよね?」と確かめるも「たまたまです」とあっさり切り返されてしまうなど、息の合った掛け合いを見せてくださいました。最終的には、監督がやはり柄本さんのシーンに合わせて名前を載せたことがわかり、ほっとした表情を見せた柄本さん。監督からの厚い信頼を伺わせました。
トークイベントも最終回ということもあり、客席には複数回このイベントに参加している方の姿も。監督からは「やりたかったことをすべて盛り込んだ4時間のディレクターズカット版もいつか作りますので期待していて」という発言も飛び出すなど最後まで熱気に溢れたイベントとなりました。
登壇者:柄本佑、石井隆(監督)、二宮直彦(プロデューサー/KADOKAWA)
司会:大崎紀昌(宣伝プロデューサー/ポニーキャニオン)
■柄本さんのまわりでは『GONIN サーガ』に対する声などはありますか?
柄本さん:家族が絶賛してくれましたね。
恥ずかしくもあり、でもやっぱり、うれしくもありますね。
他にも俳優の森岡龍くんが観て連絡をくれたり、三宅唱監督(『プレイバック』)から連絡ももらいました。
客席の方からの質疑応答
■根津さんとの共演シーンが多かったと思いますが、撮影はどうでしたか
柄本さん:根津さんのクランクインの日(病室での撮影)は僕はもちろん、スタッフもみんな、現場全体が緊張していたんですよね。ただ、いざお会いしてみると、根津さんも手が震えていて。ああ、根津さんも緊張してらっしゃるんだなと感じましたね。
撮影が進んで場面が進むごとに根津さんからどんどん昔の「GONIN」の表情が出てきていて...その姿を見て、現場にくるということが、役者にとってはいちばん幸せなことなんだなと、改めて思いました。
監督が根津さんに向かって、「お芝居して!」と檄を飛ばされたこともあったんです。そのときは、すごい場所に立ち会わせてもらってるんだなと、本番中なのに感動しました。
監督:もともと、「氷頭は生きていて、体が悪いけれど妻子の復讐をしようとしている」という台本を書いていて、そのときは根津さんの体調に関わらず、体が悪い役をやってもらおうと思っていたのが、本当に体を悪くされてしまって。
無理を言っちゃいけないと思いながらも、長い現場の付き合いがあるからその感覚で無理を言ってしまった部分もあるかもしれません。
でも、根津さんがやる(出演する)と言ってくれた以上はこちらもしっかり向き合わないとと思って、その覚悟に負けずに押し返そうという想いでした。
■氷頭さんのネクタイが前作に似ていたように思ったのですが...
監督:前作で五誠会を襲撃しに行ったときのネクタイです。前作のものはもうなかったので、今回の衣装さんがそっくりのものを新しく作ってくださいました。氷頭にとっては喪服のような感じですね。余談ですが、別で出版した小説版には、氷頭がその「喪服」に着替えるシーンも書いたんですよ。
■他の二人は襲撃でお金の使い道を考えていましたが、森澤だけは何も言わないのが気になりました。何か意図はあったのでしょうか?
監督:森澤は天涯孤独なんですね、父親は19年前に襲撃に巻き込まれて死んでしまって、母親も後を追って自殺してしまう。だから、仇を討って、なんなら仇を道連れに自分も死んでしまってもいいくらいに考えている。それは佑くんにも伝えていました。もう気持ちは「あの世」に行ってしまっている人だ、というような話をしましたね。
実際はそんなにアクションシーンは森澤は多くなくて、あんまり活躍してないね、というような意見もあったのですが(笑)
柄本さん:そうなんですか!?聞いてないですよ!笑
監督:(笑)ただ、その代わり、スクリーンの裏から仇や仲間たちの死に様をずっと見ている。"あっち側"にもう行ってしまっている人だというのを表現したのですが、そういう意味ではちょっと悲しい役でもあった。佑くんにしかできない役だと思っていました。
柄本さん:どこから撮っているかわからないし、いろいろな角度で映り込む可能性があるので、結構頻繁に血のりを足したり、メイクを直したりしながら死体役をこなしていた記憶があります。スクリーン裏で、近くで死んでいる人間役の方たちと「大変ですねー」とか言い合ってました(笑)
■ハエはどういう意図だったのでしょうか?
監督:そうですね、ハエが森澤の血や肉を貪って、"森澤"として、残っている仲間に味方して明神を襲うんですね。そして、森澤が乗り移ったハエだから、助けると言っても、みんなを死のほうへ、あの世のほうへ連れて行く助けをする、そんな考えでした。
柄本さん:台本にも、「森澤がのり移ったハエが明神を襲う」としっかり書いてありましたね。
■石井監督の作品は台詞の言い回しや長台詞だったり独特だと思うのですが、難しいなどはあるのでしょうか?
柄本さん:監督のは台詞は独特だけど、わからない、理解できない、ということではないから、そのままやっています。実際に台詞を言っている中で「石井隆の台詞だ」と思うと嬉しいですし(笑)
■エンドロールの名前で柄本さんと根津さんだけ画と合うのがすごく印象的でしたが...
監督:あれ?そうでしたか?たまたまじゃないですか?(笑)
というのは冗談で、そうですね、あれは編集でばちっと合わせました。そういう形で佑くんや根津さんにはこの作品への出演に対して恩返ししているつもりです。
柄本さん:僕、それ初号で気づいて超うれしかったんですよ!!
■ご家族も俳優をされているかと思います、家族で演技の話はしたりしますか?
柄本さん:自分がやってる仕事の話は全然しないですね。。。弟とは二人芝居もやっているけど、そのときもお互いがお互いの芝居に何か言うことはないですね。お互いが観た映画や芝居の話はしますけど。
今回、親父からは"漢字"で「五人みた、面白い」というメールがきましたね(笑)
姉は京都で観たらしく、観終わって映画館を出たそのままの流れで電話をくれました。
■万代(佐藤浩市)は最後、なぜ娘の麻美(土屋アンナ)ではなく、氷頭さんの手をとって助けたのか、というのが気になったのですが。万代にとって家族はどんな存在だったとお考えでしょうか?
監督:実は、麻美にごめんねとか言ってるカットも撮ったんですが、使わなかったんですね。
氷頭に関しては、自分が巻き込んでしまったという想いが万代の中にあるんですね、だから、男ならこっちに加勢するだろう、という気持ちがありました。
全部万代が始めたことだから、最後までバーズに亡霊でいる、という設定でした。
柄本さん:現場で浩市さんと話されてましたよね?
監督:うん、そうだね、話し合って、口の中でもごもごと「ごめんね」と言ってみましょうか、とかは話しましたね。
余談ですが、浩市くんは「髪染めたほうがいいんじゃない?」と提案してくれたんですが、僕が、そのままでいいと断って白髪で出てもらったんです。でも後からよく考えたら、亡霊って歳とるのかなと...笑
■最後に。。。
柄本さん:自分が出た作品は自分ばっかり追いかけちゃってちゃんと観れないことが多いんだけど、GONINは、初号で冷静に観れてない中でもなんかすごいもの観たなという思いだけはすごくあったので、これがひとりでも多くの人に届くといいなと、思っています。
監督:こういうイベントで何度も観てくださっている人にお会いして、その都度新しい発見があります、とか言われると、一回でわかる作品を撮れないなんて監督としてダメだなーと思ったりもしてしまったんですが(笑)
前作から20年ぶんの思いを背負っている登場人物ばっかりだったから、盛り込めない情報がものすごく多くてこうなってしまいました。
もともと、録った映像をつないだら4時間くらいあったので、もしそのロングバージョンがDVD化のときにでも出すことができれば、僕の作りたかったものがわかってもらえるのではないかなと思っています。