1月23日(土)、『GONIN』『GONINサーガ』名画座2本立て上映の初日を記念して、劇場のキネカ大森にて、2作品の上映後、『GONIN』『GONINサーガ』両作に出演の盟友・竹中直人さんと石井監督とによるティーチインが行われました。
降雪が心配される中、100名以上のお客様が会場に駆けつけ、大盛況のイベントとなりました。
■ お二人にとっての、映画『GONIN』シリーズとは?
監督: 映画少年がいつのまにか劇画作家になり、その後脚本家から、長年の夢だった監督としても映画づくりに携わるようになりました。
僕はずっと男と女の出会いを描いていましたが、男だけの映画を撮ることを竹中さんに勧められ、すぐに『GONIN』のストーリーが出来上がりました。
5人全員が死ぬ話なので、メジャーでの配給は無理だろうと言われたし、また、ビートたけしさんの出演が決まっていたので、予算的に大丈夫かも心配されました。
初めてプロらしくやろうと思った作品でした。
竹中さん: 監督との馴れ初めをいつも話してしまいますが、僕が劇団青年座にいた頃、「ヌードの夜」というタイトルが目に付いて、僕宛てに届いていた石井隆監督・脚本の台本をゴミ箱から拾い上げたのがきっかけで、監督と出会いました。
でも実は中学時代、故郷の富岡海岸で、廃船の中に干からびたエロ漫画雑誌を友達と見つけたのが、石井隆との最初の出会いでした。
「ヌードの夜」は『天使のはらわた 赤い眩暈』というタイトルに変わり、最後のロマンポルノ作品として映画化されましたが、石井隆監督デビュー作は色んなことが起きた大変な現場でした。
当時自分は34歳。"どうせ僕なんか・・・"と、いじけている監督がせつなくて愛おしくて、ずっとこの監督と一緒に仕事ができたらいいなと思い、今に至ります。
『GONIN』は、男だけの映画が実現して夢のような現場でした。
まさか『GONINサーガ』という形で、続編が作られるとは思っていなかったのでびっくりしました。
なんだかんだいじける監督ですが・・・「ずっと映画を撮ってるじゃん!」もうっ!大好きっ!!ですね。
■ 『GONIN』シリーズは全作品キャスティングが素晴らしいですが、監督がキャストを指名したのですか?
監督: 芸能界なんです(会場爆笑)。『GONIN』は、竹中さんが誘ってくれて、本木雅弘さんが1番最初に決まりました。その次に佐藤浩市さんが決まり、僕からは根津甚八さんと椎名桔平くんにお願いしました。
竹中さん: 同じ事務所の本木(雅弘)くんに、石井隆という独特だけど素晴らしい監督がいるって説得しました。
監督: 僕は自分が書いた台本に役者をはめていく、役者を駒として使って自分の言いたいことを言うタイプではないんです。
『GONINサーガ』の東出昌大くんや土屋アンナちゃんの時もそうだったけど、役者さんが決まるとすぐに出演作を観たり、会って話をして、その役者さんの個性を掴み、役者さんに合わせて台本を書き直す。
役者さんに躍動してほしい、そして役者さんが抱えるファンの方に喜んでもらいたいという気持ちがあります。
■ 石井監督の作品は雨のシーンが印象的ですが、雨に対するこだわりや苦労した点について教えてください。
監督: 母親のお腹の中に入っている時に聴いたであろう羊水の水音、そして、梅雨の終わり時、僕が生まれた瞬間に聴いたであろう雨音を連想させるのが理由かもしれません。
小さい頃から雨音が好きで、今でも雨音を聞きながらシナリオを書いたりしています。
■ 『GONINサーガ』の最後に、死んだはずの万代樹彦(演:佐藤浩市さん)が氷頭要(演:根津甚八さん)の腕を持って銃で撃たせるシーンがありますが、監督の思いをお聞かせください。
監督: 先程話した雨と同様、僕は刺激的なことを信じています。
舞台のディスコ・バーズは、万代が苦労して手に入れた場所なのに、バブルが弾けて借金の返済を迫られた。
執念深く自分の意思を貫こうとした人が途中で殺されたので、万代の何かがずっとバーズに住んでいて、最終的に登場人物全員を呼び寄せたんじゃないかということを僕は真剣に考えていました。
実は、万代は誰にも見えていない設定なんです。
土屋アンナさん演じる菊池麻美の、自分の計画が最終的にああいう展開になってほしかったという主観を映像化したシーンで、実際は氷頭が1人で銃を撃ったという解釈を僕はしています。
■『GONINサーガ』には、『GONIN』にあった男性同士のラブシーンが無かったですね。
監督: 『GONINサーガ』は、「PG-12」中学生が親同伴で鑑賞できる範囲までにしてほしいと念押しされ、エロいシーンが撮れずイライラしていましたが、ふと見上げたら土屋アンナさんがいた。
後はご想像にお任せしますが、とてもすっきりしました(笑)。
■役名を付ける経緯は?
監督: ある日突然役名が浮かんでくる。どうしても思い浮かばない時は、側に置いてある週刊誌を読んで考えます(笑)。
■『GONIN』『GONINサーガ』で演じた役柄は違うが、蠅を嫌っている点は両作とも共通している。
どうやって2つの役を演じ分けましたか?
竹中さん: 僕は役づくりに興味が無く、ノリ一発の人なので、役について分析したことは無いんです。僕は何もわからないまま演じて、監督のことしか見ていない。
石井隆が大好きで、石井さんがまた映画を撮るっている理由だけで、ただ現場にいた。
だから友達から指摘されて初めて、蠅のことに気が付きました。
『GONIN』では役柄的に太る努力はしましたが、1人だけ一生懸命役づくりをしていると批評されたりして、何をやっても裏目に出ちゃうんだよね(笑)。
監督、現場ではいつも控えめな性格ですよね?監督に従うタイプだし。
監督: はい。
■ 『GONINサーガ』のメンバー5人の中に、本来は敵役である氷頭要(演:根津甚八さん)は入っているのですか?
監督: 『GONIN』は、犯罪映画、ノワール映画を作ろうと思って撮りましたが、『GONINサーガ』は少し違う。
世間では悪く言われているヤクザにも家族や子供がいる。
『GONIN』から約20年が経ち、憎しみが別のところ、1箇所に向かっていく。
氷頭もヤクザの子供たちも同じ敵を見ているということを考えながら撮りました。
■3月25日より発売となる『GONINサーガ』のBlu-ray&DVD BOXに収録される「ディレクターズ・ロングバージョン」本編について、監督からご説明をお願い致します。
監督: 『GONINサーガ』は1ヶ月間台本通りに撮って、マスターが計4時間分。
そこから編集して最終的に2時間9分の長さになった。
ロングバージョンでは、展開が早いシーンがよりわかりやすくなっています。
最後に、締めのご挨拶
竹中さん: 本日は寒い中、本当にありがとうございました。
今日この時間を、お客さんと共有できて幸せです。
監督: 今日は雪が降ると予想されていたので、お客さんは3人ぐらいかなと思って来たら、こんなにたくさんお客さんがいらしてくださって驚いております。
今日はどうもありがとうございました。