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2018.02.09

コア・ディレクター 平松禎史 より

みな様 こんにちは。平松禎史です。
『さよならの朝に約束の花をかざろう』では、コア・ディレクター、作画監督などを担当いたしました。

 まず、この「コア・ディレクター」という聞きなれない役職名について少し説明しておきますね。
最初に堀川さんからご依頼いただいたのは「絵コンテ・演出」でした。しばらくたって、作画監督もやってもらえないか、サブキャラクターのデザインも幾つか・・・と仕事が増えていきました。さらに制作が進むに連れ、ラッシュチェック(撮影した映像をチェックして修正点を出す作業)で自分の担当パートではないところで岡田監督や篠原さんなどが改善方法に困っている時にアイディアを出すことがあり、それが次第に増えていきました。船頭が多いと船が山を登ったり空を飛んでしまって(アニメでは幽霊船や戦艦が飛んだり、船が本当に山に登ったりしますが)良いことがないので、技術的なことに絞っていましたが、結果的にかなり広い範囲に関わることになりました。終盤になって堀川さんから「(単に演出ではなく)何か役職名をつけたい」と提案があったので、いろいろと相談して決着したのが「コア・ディレクター」だったのです。ちゃんちゃん♪

 さて、今回はインタビューではなく文書でお送りしております。とはいえ、自分であれこれ考えるだけだと狭くなりそうなので、『さよ朝』を最初から最後まで支えてくれた制作デスクの橘内(きつない)君に質問を募集しました。彼が出してきた質問は4つ。以下、質問は原文から文体を少々整えています。
では、ひとつひとつ参りましょう。

Qー1:岡田監督と一緒に仕事をしてみて、どう思いましたか?

 岡田監督と仕事をしたのははじめてでしたが、物語や登場人物、場面の意味などが明確でやりやすかったです。一方で、すべての要素をまとめてババーーッと出すタイプではないようで、やり取りをする過程や雑談のなかにヒントがあったりして、何か聞き出そうとして出て来るのではなく、不意に「あっ、それ!」てな感じであらわれるので最初は少しだけ戸惑いましたが、だんだんそれがおもしろく思えるようになりました。作品そのものもそうですが、やっていく(観ていく)なかに発見があるのが楽しかったです。

Q-2:最初に脚本を呼んでみて、どう思いましたか?

 ファンタジーは、これまで演出で手がけたことがなかったので、自分にできるかどうか心配でしたが、(ネタバレになるので詳しく書けないけど)作品の本質的なところが自分の興味と重なっていたことや、登場人物が魅力的だったことなど、読んでいくうちに気にならなくなりました。
堀川さんから「ここを」と言われたパートは中盤で、いわゆる「ダレ場」です。どんな物語にも必要な「場」なのですが、さすが堀川さん、ボクの趣味をよくご存知で、最初に読んだ段階でいろいろな映像が浮かんできました。

Q-3:担当パートを演出するにあたって、どのように表現したいかなど、こだわりはありましたか?

 ボクが担当したパートは、PVでチラッと見える大きな水車のある石造りの町が舞台です。それまでのイオルフの村やメザーテの王都とはまったく違う環境なのが楽しかったし、マキアとエリアルの関係性が変化していく過程を描くのもおもしろかった。演出をやっていておもしろいのは人物の関係性や心情が変化していく様を描くことです。それをどうやって伝えるかに、一番注力しました。

Q-4:平松さんが思う作品の見どころは?

 全部です。
いや・・・もう少し絞りましょうか。
個々の場面で魅力的なところがたくさんありますが、映画全体に流れる時間の中で激しく変化していくものと変わらないものの対比が見どころだと思います。一度観ただけではもしかしたらピンと来ないかもしれません。でも、ボクらを取り巻く環境の変化、人間関係や、四季折々の変化があって、時にはげしい自然の猛威がある生活のなかで、どんなに時間を経ても変わらない、形にあらわれないものがあるのではないか。そんなことを発見していけるとしたら、それがこの映画の見どころだと思います。やっぱり、全部ですね。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、P.A.WORKSの若手から井上俊之さんやボクのような年配(?)まで、全てのスタッフが持てる力を全部出した作品です。美術は美しいし、音楽もすばらしい。撮影も音響効果もとてもこまやかで、石井百合子さんの描く登場人物はにおいまで感じられるように生々しい。
是非とも、劇場でマキアやレイリアのにおいを嗅ぎに来て、じゃなくて、生き様を!一緒に体験いたしましょう!!