岨手由貴子監督・山内マリコ登場!スペシャルトークイベントを実施しました
3/14に岨手由貴子監督と原作者の山内マリコさんが登壇してのトークイベントを行いました。この日はクローズドということで、SNSに寄せられた熱いコメントの中から岨手監督と山内さんが気になるものをチョイスしトーク。
まずは【「花束みたいな恋をした」と「あの頃。」は愛と趣味についての映画であり「あのこは貴族」は愛と趣味のないところでは剥き出しの社会構造がせり出して来ていかに人生が荒涼としたものになるかという話である。】という感想に対し、
岨手監督は「公開時期が近いので『あの頃。』や『花束みたいな恋をした』と比べられるんですよね。この2作品は自分の趣味=アイデンティティになっている主人公を描いている作品だと思うんですけど、主人公の華子はものすごい文化的素養がある人のはずなのに、趣味=自分のアイデンティティになっていない人物で非常にキャラクターを描くのはものすごい難しかった」とコメント。
また山内さんも「門脇さんも華子がどういう人物なのかつかめなかったとお話されてましたけど、私も書きながらどういうキャラクターなのかなと探っていました。もともと私はどちらかというと趣味で自分を作ってきた人間なので、そうではない人物が描きづらい部分はあって。そのため華子の場合は内面を掘り下げるというよりは、彼女が属している世界、家族との関係、周辺を描くことでどういうタイプの人間なのかを描いた感じです。映画になって門脇さんが演じられているのを観て、本当に血肉になっている、魂が吹き込まれていると感じて驚きましたね」と主人公である華子のキャラクター作りの裏側を明かしていました。
続いては【わかりやすいところも含めて階層の見せ方が結構上手な気して。俺が一番好きだったのは終盤での階段の使い方で魅せるシーンでこれが超いいのよ。決して降りられないことが示唆される人物と完全に降りてる人物、その中間に立つ人物と配置の妙が光ってこれぞこれぞ!と結構アガる。】という感想コメントについて、
山内さんは「『パラサイト 半地下の家族』が公開された時に画面を上下にして階層を表現しているというので盛り上がっていましたけど、この映画も最後のシーンでずっと上にいる幸一郎と中間地点にいる華子、そして上にも下にも動ける逸子を映し出し階層を表現しているなと思ったんですけど、あの演出は意識したのですか?」と質問。
それに対し岨手監督は「この作品はたくさんの選択肢の中からロケ地を選べた訳ではなく、最後のシーンの演出をあの形にしたかったからあの場所というわけではないんです。ただ実際に場所をみて、幸一郎は上にいて下の階層には降りられないというのが撮れるなとは思いました。そのシーンに限らず、逸子が階段を下りて帽子を飛ばしてしまった女性の帽子をパッと取りに行くシーンがあるのですが、あそこの階段のシーンでも割と意図的に、下の階層まで降りられる逸子と動かず上の階層にいる華子を描いているんです」と様々なシーンの裏に階層を描く上での意図があると明かし、ここでしか聞けない話が満載のイベントとなりました。
映画『あのこは貴族』は絶賛公開中です。