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【9/2(木)実施:舞台挨拶 レポート】
原案者 片野ゆか、ついに実現した”犬部”映画化に喜び!
篠原哲雄 監督、ペット流通事情に詳しいジャーナリスト 太田匡彦とリアルが息づく映画の見どころと、現実への想いを語る!

この度、本作の原案書籍「北里大学獣医学部 犬部!」の著者である片野ゆかさん、朝日新聞記者でペット流通についての取材を長年続け書籍も執筆している太田匡彦さん、そして篠原哲雄監督が登壇し、特別舞台挨拶を行いました!

公開から1ヵ月以上が経過してもなお続く盛り上がりを象徴するように、完売御礼となった舞台あいさつ。片野さんが「10年以上前の出版当初から今まで、何度も映像化のお話があったが実現に至らず、もうお話を頂いてもすぐに”不可能”だと思うようになっていた。今回とても熱心にお話いただいて、いろいろハードルの高いお願いをしたけれど、それが実現した。原案者としてすごく嬉しい。」と笑顔で喜びを語ったほか、太田さんは「10年以上取材してきた立場からも非常にリアル。まさに取材で見聞きしてきたものが、映画の中に盛り込まれていると思います。」と力を込め、映画の完成度の高さを強調しました。

「原案著者・ジャーナリスト・監督と犬たちの幸せを考える」というテーマに基づき、片野さん、太田さん、それぞれ長年の取材を通して見つめてきた現実と、映画でも描かれるリアルな部分との共通点を紐解いていく濃密なトークが展開され、この映画のさらなる広がりと、保護犬・保護猫にまつわる今後への前向きな展望もうかがわせる、意義深い舞台挨拶となりました。


映画『犬部!』 特別舞台挨拶
【日時】9月2日(木)
【登壇者】原案・片野ゆか、太田匡彦(朝日新聞記者)、篠原哲雄監督
【会場】角川シネマ有楽町


▼イベントレポート
新たに上映を開始した角川シネマ有楽町で行われた舞台挨拶は、全国公開から1ヵ月以上が経過しているにもかかわらず完売御礼。本作の原案書籍「北里大学獣医学部 犬部!」の著者である片野ゆかさん、朝日新聞記者でペット流通についての取材を長年続け書籍も執筆している太田匡彦さん、そして篠原哲雄監督が登壇するとあたたかい拍手に包まれました。

篠原監督から「東京での公開は一旦落ち着きましたが、また再スタートという形で角川シネマ有楽町さんは2週間ほど上映してくださるということで、今日を皮切りにまた『犬部!』で盛り上がってくれたら嬉しいです」と挨拶、片野さんは「本を書いている人間は、普段、読者の方のお顔を拝見する機会がなかなかなく、コロナ禍の中なおさらで、今日こうして同じ空間をみなさんと共有できることを嬉しく思います」と続け、太田さんが「10年以上ずっと犬猫の問題を取材していまして、こういった場は初めてに近いのですがいろいろお話できればと思います。主人公のモデルになった獣医師の太田快作さんとは、特に血縁関係はありません(笑)」と冗談交じりに話し、会場も和やかな雰囲気に。

本作の原案書籍「北里大学獣医学部 犬部!」が映画化に至るまでの経緯として、片野さんから「10年以上前の出版当初から今まで、何度も映画化・ドラマ化のお話があったが実現に至らず、もうお話を頂いてもすぐに”不可能”だと思うようになっていた。今回はプロデューサーの近藤さんからとても熱心にお話いただいて、ここまで熱心にお話を頂けるのであれば、いまの最新の動物愛護事情を取り込んだエンターテインメント作品にしてください、とお願いをしたんです。なかなかハードルの高いお願いをしたけれど、なんとそれが実現した。原案者としてすごく嬉しい。」と明かされると、篠原監督も「そう言っていただけると、作った者としてとても嬉しく思います。僕も、片野さんの本を読ませていただいて”動物が幸せに生きるために戦っていく人たちの話”を強く描いていると思って、オファーを受けさせて頂いたんです」と共鳴。太田さんも映画を観た感想を「10年以上取材してきた立場からも非常にリアル。登場人物の心情も、譲渡会や保護動物の実態も、まさに取材で見聞きしてきたものが、映画の中に盛り込まれていると思います。エンターテインメントとして楽しいのは大前提として、ドキュメンタリーを見ているような感覚にもなった。個人的に、中川さん演じる柴崎の役について、いつか保護活動の必要が無くなるようにと、仕組みや制度を変えていくために行政の側に就職をする決断に共感しました。そこが描かれているのが素晴らしいと思います」と語りました。

片野さんは、実在の”犬部”の取材をはじめた頃を思い返しながら、「10数年前は、動物愛護活動がほとんど社会的に認知されていない、むしろ反社会的なくらいの見られ方で、保健所職員に所属しているだけで、殺処分に携わっているとして差別の対象なくらいで、名前も顔も出せないという方もいた。中にはご家族にも言っていない方もいて。そういった仕事をしている方が悪いのではないし、そんな誤解や思い込みを少しでも減らすためノンフィクションやエンタメで発信していきたいなと思ったんです。太田さんはもっと感じてらっしゃると思いますし、太田さんがそのブラックボックスを開けてくださったんじゃないかと。危険なので、誰か取材してくれないかな…とも思っていたら太田さんが取材してくれていたんです」と語ると、太田さんからも「おっしゃるとおり、取材は断られる傾向が強くて、朝日新聞という組織に属していたからできた部分もあると思いますが、特に繁殖業者やペットショップの実態についてこじあけていかないといけなかった。中にはあからさまに脅してくるような人や、『踏み込むと大変なことになる』と忠告されたりもして、話を聞くのが大変でした。」と衝撃的なエピソードも飛び出した他、この日の早朝まさに多頭飼育のブリーダーに家宅捜索が入った様子を取材してきたといい、「犬猫の繁殖・販売業者のなかには、獣医師でもないのに帝王切開をして生ませたり、動物を極限の状態に追い込んだりしているところは今もある。そういう人たちを取材しに行くと、よく怒鳴り散らされる。やっぱり社会として法制度を作ったりして解決していかなければ、犬猫を救えない場面を沢山見てきた。2019年の法改正で良い水準にようやくなってきましたが、まだまだのところもあります。」と力を込めました。

時折感嘆の声を漏らしながら聞き入っていた篠原監督が「動物が生きやすくなるために頑張っている獣医さんや行政の方々の葛藤をドラマにすることは出来たけれど、普段この問題に対して自分のような一般の人間ができることは何か、お伺いできますか?」と尋ねると、片野さんも太田さんも共通して答えたのは「関心を持つこと」。片野さんは「この映画のように、笑ったり泣いたりしながら、世間でこういったことがあると気付くきっかけになったり、いまはSNSでもいろんな情報があるので、譲渡会情報をRTする、チャリティーグッズを買ったりすることもすごく良いと思います。犬猫のためになることはたくさんありますし、たくさんの人の力が集まれば世の中まだまだ変わるなと私は考えています」と身近な例を挙げ、太田さんも「ペットショップや譲渡会の場で犬猫を見たときに、この子たちの親やきょうだいはどこにいるのか、どうしてそこに来たのか、という背景を立ち止まって想像みると、自分に出来ることも思い浮かんでくるかなと思います。他にも、何か問題が起こると行政側に抗議の電話が殺到して大変になるというケースもあり、出来ていない自治体を責めるよりも、良い対応をしてくれた自治体を褒めたり取り上げたりして、他が真似するような流れも必要かなと感じています」と前向きに変わっていけるポイントを力説。そんな話を受け、篠原監督も「この映画でも保健所、愛護センターが出てきますが、撮影に協力をしてくださった自治体の皆さんは、自分たちの活動もアピールしながら非常に積極的に臨んでくださったんです」と振り返ると、片野さんが「一般の方でも、SNSで紹介したい、子どもと一緒に自由研究したい、など相談してみると好意的に対応してくれるところも多くなっているはずなので、一歩踏み込んでみるのも大事ですね」と続け、太田さんも「動物愛護センターは綺麗に作り直しているところも多く、ウェルカムに受け入れてくれるはず。ただ裏側では、残念ながら殺処分が行われているのが現実なので、そういった想像力は持っていて欲しいなと思います」と重ねて想いを明かしました。

最後に、篠原監督が改めて「この映画も、主人公が保健所から犬を授かってくるところから物語をスタートさせてもらって、開業獣医師になる、行政機関に進む、病気の研究をする、それぞれの生き方を描きながらなるべくエンターテインメントにしたくて脚本の山田あかねさん達と苦労もして作ってきました。少しでも届いて欲しいですし、なおかつ映画なのでまず楽しんでいただくことも大事。ぜひお願いします」と力強く映画をアピールすると、片野さんも「私も実は、自分でこっそり映画館に行って4~5回観ています。いろいろ堪能できるところがありますので、是非楽しんで欲しいです」と感慨深げにコメント、太田さんも「法律や制度は随分良くなって整いつつありますが、それを運用していくのは人間。この映画を観て、みなさんが関心を持って一歩動いて、良くなってきた制度に血を通わせていくきっかけになってほしいです」と語り、本作のさらなる広がりと未来への期待を込めて締めくくられました。

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