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2012.11. 8
11月3(土)文化の日 西川美和監督×平林克理監督 ティーチイン付上映レポート!!

ペンギン 018.jpg『ペンギン夫婦の作りかた』スマッシュヒット記念!!11月3(土)西川美和監督(『夢売るふたり』『ゆれる』)と本作品の平林克理監督を招いたティーチイン付上映会をユナイテッド・シネマ
浦和にて行いました。
西川美和監督の長編作品全てに演出補として参加し、西川作品の現場には欠かせないスタッフとして活躍してきた平林監督との出会いから、お互いの最新作まで語って頂き、会場内も多いに盛り上がりました。


■日程:2012年11月3日(土祝)■
■会場:ユナイテッド・シネマ浦和■
■登壇者:西川美和監督、平林克理監督■


<お二人の出会い>
平林監督(以下H):「蛇イチゴ」の現場からですね。みなさん「蛇イチゴ」って観たことあります?一軒家が舞台だったりして、狭い家で、西川監督が初めての作品だったからそんなに潤沢な予算もなく、カメラの近くに行かないとどういう風に俳優さんがお芝居しているか分かんないっていう・・。だけど監督はなかなかそういうのを言い出せなくて、一番端っこっていうか全然見えないところにいたんで・・


西川監督(以下N):笑。そうですね。


H:それを、「ちょっとちょっと、ヤローどもどけ。」と。で、三脚の下に、西川さん小柄だったものだから三脚の下に座ってもらって、特等席を用意するっていうのが、一番最初のお仕事というか。(西川監督&会場笑)色んな現場で監督を誘導するっていうのが、始まりです。


N:そうですね。それ以来3作品は、現場のリーダーという存在でやってきていただいて、ずっと付き合いをさせていただいておりました。


<西川監督の撮影現場は?>
N:私が思ったのは、助監督ってすごい仕事なんですよね。私は「こんなのにしたい」とつぶやいたら平林さんとか、そのほかの助監督さんたちが現場を作ってくれるので、本当にある意味、平林さんたちがいなければ自分の映画の世界観とかムードとか出来なかった、と思っていますね。
だから自分で何かをやってるとか、何かをリードしてるって実感がないくらい演出部の方にお世話になってきたんです。


H:西川さんの台本って、小説みたいなんですよ。もう、ト書きがびっちり書いてあって、たとえばカエルが飛び込むとか、アイスが溶けるとか、セリフ以外の描写がきっちり書いてあるんですね。で監督が脚本を書くっていうのは、それがやりたい、っていうことなんですよ。


N:そうだ、カエル育ててましたよね。(会場笑い。)


H:そうなんですね。カエルを育ててまして。で、夢売る・・の時はネズミを育ててるやついましたからね。『ディアドクター』の時、アイスがポトって落ちて溶けていくっていうのも、あれ、熱線を下に仕込んで溶け方を工夫するっていうのや、あと、肺気胸っていう、肺にプシュって穴をあけて(治すシーンで)、あったかい空気だからつるべさんのメガネが曇るっていうのを夏場にやりたいって言われて・・・夏場じゃ曇んないだろっていうところをさんざん実験したりして。CGじゃなくてアナログでどうにかできないかって・・・。


N:永遠に実験してましたもんね。なんでもね、そうやって映画のワンカットって2秒3秒のカットでも、やっぱり嘘の世界だからそれを仕込むのにすごい時間と工夫を、で、同じことってないじゃないですかなかなか。そういうことの映画って積み重ねなので本当に。


H:まぁ、でも助監督から言わせてもらうと、そこまでやろうっていう気持ちにさせて監督がさせてくれるっているのがやっぱり・・この人ならっていうのがあると思うんで。


N:うん、だから平林監督が監督として羽ばたいていって私の現場にももう来てくれないと思うとちょっと寂しいですけど。


H:いや、やりますよ。笑


<最新作について>
H:出来上がりを想像して、現場で俳優さんが演じてみてだいぶ思ってた印象が変わってしまった、でもそっちの方が正解だからって俳優に引っ張られてったところが多々あってですね・・


N:たとえば?


H:小池さんとワンチュアンイーさんの夫婦の在り方、もうちょっとライトにやるのかなーと思ってたんですけど、やっぱり国際結婚だっていうことがちょっとリアリティになかったみたいで。夫婦で、よく相手を知っているんだけども、いろんなことをそこから知り合っていくというか、理解しないと話が先に進まないっていうのってああいう感じなのかなって。お互いに探り合っている感じっていうのをみて、ああ、こういうのもありだなーって思ったんですね。


N:小池さんのイメージってどのくらいから浮かんでったんですか?


H:いやもう、なんか島にああいう風に仁王立ちで立ってかっこいいのって、あのくらいのボディーの人でないと、なかなか・・(西川監督&会場笑い。)


N:確かにこの方だったら、いきなり石垣島に移住しても生き抜いていけそうなバイタリティーを感じられる女優さんですよね。


H:だからすごい小池さんには助けられた部分もあるし、映画の一部を、大事な部分を作ってもらったていう感じはすごいします。だから演じてもらったっていうよりも、ふくらまして育ててもらった感じがするので、いい人と出会えたなーと思います。


N:ワンさんとのコミュニケーションは?監督は?


H:通訳さんを通じてだったんですけど。演じる上でお互いを知りあう力、理解しようとする力は凄まじく強くて。コンマ何秒で相手はこう来た!だから私はこうする!みたいなのを、芝居とは別の次元でやっているんですね。だから・・うん、すごい二人でしたね。


<両作品とも料理のシーンが多数登場しますが、その演出について>
N:私の方は居酒屋さんっていう、居酒屋を営む夫婦のお話だったので、そういう場面もありましたけども・・


H:パンを食べるのは、あれは誰が芝居つけたんですか?松たか子さんが○○パンを食べる・・(西川監督&会場笑い)


N:CMが、契約が大丈夫なのかって・・。笑


H:そうそう、あんなむしゃむしゃ、おいしそうっていうかやけ気味に・・あれはテストはあまりやらなかった?


N:はい、段取りだけ言って、こうこうこうしましょう、って話して。もう思いっきりいってくださいって、段取り説明して、このくらいの尺で撮るって説明しているので、いきなり思いっきりいってくれましたね。醜い顔になってもいいっていうか・・そういう顔が見たいんだっていう話はしました。


H:うちらの場合は撮影期間が短かったので、二人がいかに仲良くしてもらうか。二人の息のあったところを見せるかだったので、ごはん食べるシーンは、ワンさんには好きにやってもらって、地元式の食べ方で全然かまわないと。そしたら小池さんはそれに合わせて。監督も食べてらっしゃると思うんですけども、ラー油美味しかったんで。


N:私の映画は、食べ物がそんなにウェイトが高いわけではないけども、本当おいしそうでしたよね。何か工夫はされたんですか?


H:うーん、雑に盛るってことですかね。計算されてはいるけども、おいしそうに、家庭の味が基準だったりするので、一個二個とかじゃなくて、とりあえず量を。でとりあえずガッツく。


N:フードコーディネーターの方とかは入らなかったんですか?


H:実際にペンギン夫婦の方が作ってくださったので。


N:現場に来て?けっこう大変ですよね?


H:うん。だからずっと。手を抜かず全部美味しい料理だったので。助かりました。


N:映画の撮影って何テイクも撮らなきゃいけないじゃないですか?だから餃子一皿分っていうシーンでも、15皿分とか用意してありますよね。それは全部ご夫婦が?


H:そうそう。手を抜かずに。全部美味しくいただきましたけど。


<理想の夫婦像とは>
N:平林さん、ね?映画をきっかけに?
(※平林監督は本作の公開を機に結婚。)


H:ありがとうございます。(会場拍手)試写を観た方もこれをみて結婚したという方も。


N:いい映画ですね。(会場笑い)


H:『夢売るふたり』はないんですか?これを観て・・


N:これを観るとあぶなくなる可能性がある。(会場笑い)ちょっとカップルや夫婦で観るのは危険よって言ってるんですけど。


H:いやいや。でも、観終わったあと、よりお互いに頑張ろうって思えるじゃないですか。


N:ああ、そうですかね。どうなんだろう。でも、これを夫婦で観られるっていうのは、いろんなもの分かち合いつつ、共有しつつ生きてるんだなっていうのはありますね。


H:俺なんか、「ペンギン」はまだ乙女チックなところがあるんで。(西川監督笑い)カップルとかでこれを観てもらって、もじもじしてもらえたらうれしいなと思いますけど。まだそんな大胆なのは撮れない。(西川監督&会場笑い)


<今後撮りたいテーマ>
N:撮り続けることっていうのは大事だけれど、なんか撮らなきゃ急いで話を作ってもね。
ちょっと、小説家に転向するとかじゃないですけども、映画のために話を作るんじゃなくて、小説とかで何作か小さな話も大きな話も書いてみて、その中で、この話って映画のサイズにもすごく合うなって、私の演出に向いてるなって思うものがあれば、それをふくらましてくっていう作業に来年は回していきたいなと。


H:いいですね。恋愛もののもうちょっと大人っぽい、大胆な描写があるやつに・・。まずはキスシーンから。(西川監督&会場笑い)


<最後に一言>
H:短い間でしたが、ありがとうございます。家に帰っても今日のこと思い出してもらって美味しごはん食べていただければな、と思います。本日はどうもありがとうございました。


N:この企画に便乗させていただいて、平林監督とお話しをさせていただけて本当に楽しかったです。平林監督のお人柄のにじみ出た優しい映画になっているなと思いますので、今後とも『ペンギン夫婦の作りかた』と平林監督をみなさんも応援してください。よろしくお願いします。