2016.10.20

映画「聖の青春」公開記念イベントレポート!
~羽生王座&原作者・大崎善生氏、村山聖九段を語る~

映画『聖の青春』公開記念にて、羽生善治王座、大崎善生による「村山聖九段を語る」トークイベントを実施しました!みなさま、ご来場ありがとうございました。
トーク内容をご案内しますので、会場に来られなかった方々も、是非ご覧ください!

▼羽生王座と、『聖の青春』原作者・大崎善生氏
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【イベント実施レポート】

会場に用意された席数を大きく越え、約400人という大勢の一般客が詰め掛けた本イベント。
開始前から立ち見の観客で会場は満杯となり、会場の外からイベントを見る観客の姿も。

そんな中、MCの呼び込みとともに羽生善治王座と大崎善生さんが登場すると、
会場の盛り上がりは最高潮に達しました。

まずMCより、先日行われた第64期将棋王座戦で羽生さんが見事に防衛を果たしたことを改めて案内されると、会場からは大きな拍手が!

そんな羽生さんは「村山さんとは十代の頃からの貴重な思い出がたくさんありますね。
実際に彼と接していた一人として、『聖の青春』が映画化されたことを
とてもうれしく思っています。今日は大崎さんとさまざまな思い出を話せれば」とご挨拶。

続いて挨拶した大崎さんは、本作の原作を執筆した当時を振り返り、
「実は村山さんの師匠である森信雄さんに本の為に何かを聞いたことはなかった。
それは森さんが毎日のように村山君の話をしていたからなんです」と、
村山さんと森さんの師弟愛を感じさせる裏話を明かしました。

最初に村山さんが上京する前の大阪での生活に話が及んだお二人。
「彼は半径数百メートルで生活していたようなひとだった」と大崎さんは振り返ります。
映画で描かれてる村山さんの生活圏が忠実に再現されていると話し、
今はすっかりお洒落な地区になってしまった大阪の福島に思いを馳せます。

実は大阪にある村山さんが借りていた部屋は、大家の好意で今も残っているそう。
「村山さんが住んでいた前田アパートという場所が今でも残っていまして、
大家さんが好意で空けたままにしてくれているんですね。
いまでも全国からファンが訪れて、多いときは1日に2人来ることも。
村山さんの部屋に入って、感極まって泣き出すファンもいるんですよ」

羽生さんも村山さんとの大阪での思い出を語り、
「彼に連れられて行きつけの食堂に行ったことを憶えています」と、
村山さんが地元愛の強い人物であったことを話しています。

続いて、村山さんの好きなものに話が移ると、
「なぜか高倉健さんが好きで『網走番外地』が好きだったそうです(笑)」と笑みをこぼす羽生さん。
また、彼が読書家であったという意外な一面も明かし、大崎さんも
「本屋さんに行くと、作家である私にいろんな本を薦めるんです(笑)」と、
将棋から離れた村山さんの日常の顔を二人は懐かしみました。

上京してからの話に及ぶと、まず大崎さんが物であふれていた村山さんの部屋について言及。「部屋に入ると姿が見えないんです。家の中にダンボールハウスを作っていて、
彼はその中で食事をしていたりしました(笑)」

そして、村山さんが東京に行こうと思った理由について
「実は、『羽生さんと同じ空気を吸いたい』という理由だったんですよ」と大崎さんが告げると
「本当ですか!? 初めて知りましたよ!」と羽生さんが目を丸くする場面も。
「一番最初にお会いしたときのインパクトが強かった」と第一印象を語り、
「プロになりたての頃の指す将棋は、とても荒削りで対局中もすごく苦しそうなんです。
でも、指す将棋はとんでもなく冴えていて、その二面性に異質なタイプなんだなと感じました」
と続け、特別な存在として見ていたことを明かしました。

村山さんの勝負に対するこだわりを、師匠に遠慮なく勝ってしまったエピソードを引き合いに出し語る大崎さん。その一方で、変わり者だった一面も回想します。
「東京の鳩森八幡神社で朝、村山さんと会ったんです。『どこ泊まったの?』と聞くと、
『そこの軒先に泊まりました』というんですよ(笑)」と驚きのエピソードを明かし、
これには羽生さんも言葉を失って苦笑しながら、「村山さんとはこういう人って一言で言えないんです」と、彼が見せたさまざまな顔に思いを馳せていました。

実は村山さんが生前、最後に負けた相手でもある羽生さん。
その対決を振り返り、「9割方(自分が)負けていたが、
最後に信じられないミスが出て、村山さんとしてはかなり残念な一局だった」としみじみ。
自分が負かされた対局は今でも鮮明に憶えているそうで
「彼の手の動きが印象的で今でも覚えている」と、村山さんが残した強烈な一手を思い出し
心を熱くさせた様子でした。

また、村山さんが亡くなる前、父親にせがみ病を押して広島まで羽生さんに会いに行った話になると「まさか最後になるとは夢にも思っていなかった」と当時を振り返る羽生さん。
「村山さんは、ひょっこり現れて、ひょっこりいなくなるという印象だったので
きっとまた会えると思っていた」と、それが最後になってしまったことを惜しみました。

その後も、将棋会館にお菓子を持ち込む習慣は村山さんが根付かせたという話や
将棋世界の原稿を書くことをとても嫌がっていたエピソードが飛び出すなど、
思い出話に花が咲き、会場は暖かい笑いにあふれました。

最後に訪れた観客に対し、本作の魅力について語ったお二人。

大崎さんは、松山さんの役作りに言及し
「松山さんは内面の役つくりまですごかった。村山さんと松山さんの内面は
本当に似ているんじゃないかと思うぐらいでしたね」と手放しで褒めました。
また、自身を演じた筒井道隆さんについて「かっこいい」と話しながら、
「森さんから『大崎さんが顔を洗って出てきたみたいだ』と言われた(笑)」と
会場を沸かせました。

羽生さんは「自分が出る映画を観た際は不思議な感覚でした(笑)」と率直な感想を述べ、
自身を演じた東出昌大さんの演技に対し、
「20代の頃の自分の仕草やクセを本当によく研究していましたね」と絶賛。
そして、村山さん演じた松山さんの情熱と、昭和から平成に移り変わる当時の時代背景を
細部までこだわって描いた森監督の技量を褒め称え
「多くの人に観てほしい作品」と締めました。

村山さんと濃い時間を過ごしたからこそ出てくるお二人の思い出エピソード。
その話を通し、村山さんの魅力的な人となりが伝わってくるトーク内容となり
映画への期待高まる、大盛り上がりのイベントとなりました。

以上

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