2018.03.01
2018.03.01
脚本を書く際に、指針となるのが監督です。監督が求めるものを探り続け、意見をもらいながら改稿を重ねる。悩むこともあるけれど、自分にない視点に「あ、これいい!」と感じた時の快感は、共同作業ならではです。そんななか、ときどき「岡田さんの思うままに書いて」と言ってくれる監督がいます。どんな監督と組む以上に、実は緊張するんです。ここまで信頼してもらっているのだから、中途半端な脚本はあげられないというプレッシャー。でも、自分でベストだと思える脚本を書けば素晴らしい映像にしてくれると、作品に対して前のめりにさせてくれる……そんな監督の一人が、篠原さんです。
今回、取材を受けていて「どうして監督をやろうと思ったんですか?」という質問がとても多かったのですが……いろいろ理由はありながら、最後に背中を押ししてくれたのは篠原さんでした。篠原さんが「監督やってみれば?」「やるなら手伝うよ」と言ってくださったからこそ、現場に飛びこむ勇気がもてたんです。でも篠原さんが言っていたのは、『監督』ではなく『総監督』という意味だったようで。またしても私は曲解していたのですが……本当に、我ながらどこまでも迷惑な奴です。でも、篠原さんは「まじかー」と言いながら参加してくれました。
篠原さんは今回、副監督として作品全体を、そして監督経験のない私を支えてくれました。脚本の時と同じく「岡田さんの思うままに」と、私がジャッジをしやすいよう様々な方法を考えてくれて。各セクションとの打合せの仕方、コンテの書き方、監督としての心構えも教えてもらいました。篠原さんの言葉で見えてきたこと、救われたことが何度もあります。そして、演出面でも。とにかく大変なカットの多い作品なので、それをどう見せていくかという演出処理が本当に大変で……篠原さんは数多くの難しいカットを、自分がコンテを書いていない場面でも担当してくれました。
篠原さんにコンテをお願いしたのは、パート単位ではなく「マキアとエリアルの幸せな瞬間」全般です。いろんな幸せの捉え方があると思いますが……篠原さんは、丁寧に重ねていくことをとても大事にしている方です。アニメでは本来、「あたり前には存在しないはずのあたり前」をしっかりとすくいあげていく。それが、キャラクターがいる世界に広がりと厚みをもたせ、映像に温度と息づかいを与えてくれる。品があって繊細で、あたたかくて。篠原さんの描く世界が、私は大好きなのです。
企画がスタートして。篠原さんが私のことを「監督」って呼んでくれた瞬間に、いろいろと覚悟が決まった気がします。篠原さんは、この作品の父のような人です。これから少しでも、親孝行できたらなと思っています。