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2018.01.26

副監督 篠原俊哉 インタビュー

――ついに『さよならの朝に約束の花をかざろう』が完成しました。
篠原 もう試写会が始まっていますが、実はまだ完成品を見てないんですよ。いつ見られるのかな(笑)。
僕は最初、岡田麿里さんが監督するなら、総監督としてTVシリーズをやるのがいいんじゃないかと思っていたのですが、映画だと聞いて慌てました。TVだったら長くても1年半ぐらいで終わると思っていたのが、結果的には最初のミーティングから3年半以上に渡る長期の仕事になりました。岡田監督言うところの「老後の渦中」にある身としては、いささか複雑な思いです(笑)。

――副監督というクレジットですが、どういう立場でしょうか。
篠原 裏方として岡田(麿里)監督を支える役回りです。今回自分がやっていることは、演出的な統括という点をサポートする補佐役です。

――補佐役ですか。
篠原 監督がやりたいこと、イメージしていることを聞き出して、それを具体的に映像に落とし込む作業の現場監督みたいなものでしょうか。なるべく自分の意見を交えずにいくつかの選択肢を提示して、岡田監督にジャッジしてもらうようにしました。僕たちが関わるアニメづくりって、ひとりが全部やってしまうのは非常に稀なケースです。僕自身監督をやっていますが、絵や脚本を書くわけではないし、音響監督ができるわけでもない。それでも監督がやれるのはたくさんのスタッフの尽力があればこそなんです。それでいうと、岡田監督は、まず自分で書いた脚本があり、キャラクターを含めた作品世界のイメージもはっきりしている。だからあとは実務的なところをサポートするスタッフがいさえすれば、堀川憲司プロデューサーが考えた「岡田麿里100%」という作品がおもしろい形で実現できるんじゃないなかと考えました。

――篠原さんから見た脚本家の岡田麿里さんというのはどんな方ですか。
篠原 はじめて岡田監督のシナリオでコンテを描いてからもう12、3年、一緒に仕事をしていますが、いまだに底知れぬ才能を感じる脚本家です。自分はその一端にしか触れていませんが、キャラクターの描写力、発想の面白さ、ストーリーの構成力、一言でハートを鷲掴みにする強いセリフ等々魅力を言い出せばキリがありません。特に構成の絶妙なバランス感覚は、腕の立つモビール職人のようです。モビールってこっちのおもりを外したら、どこか別のところにおもりをつけないと全体のバランスが崩れてしまいますよね。ひとつのストーリーの中でどこにどんな重さの錘をつければ全体が過不足なく成立するのか、その難しいさじ加減をサラリとやってのける印象が強いです。

――公開を待っているファンの方に一言お願いします。
篠原 今回、スタッフの間では「さよ朝」に対する感想が人により随分違っていました。誰の視点に寄り添うか、何を一番大事なものとして見ていくかで大きく姿を変える映画になっているからだと思います。ですから、一度観るだけでなく、二度三度と観て、そのたびに新しい発見を楽しんでいただけたら。そしてその中で、少しでも琴線に触れるものが発見できれば、作り手としてこれ以上の喜びはありません。

しのはら・としや/主な監督作品に『黒執事』、『戦う司書 』、『凪のあすから』などがある。